症例報告

症例報告

【ご注意】以下のページには手術中の写真が含まれています。あらかじめご了承の上お進みいただけますようお願い申し上げます。

肺水腫(僧帽弁閉鎖不全症)

2021.08.26
◆チワワ 14歳7カ月 去勢オス 4.02㎏
◆稟告 今朝から急に呼吸が速くなり、舌の色が悪い。

◆診断
僧帽弁閉鎖不全症による肺水腫

◆肺水腫の病態

僧帽弁がしっかりと閉鎖しないため逆流が起こる
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左心房と肺静脈の血圧が上昇する
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心臓のポンプ力が低下し心肥大を引き起こす      ⇩
肺静脈圧は更に上昇
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血漿(血液中の液体成分)が血管外(肺胞内)に漏れる
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正常な酸素交換が出来ず、呼吸困難に陥る
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この状態が継続すると、数時間で死に至る

◆入院治療 
緊急な内科治療が必要となります。
降圧剤・利尿剤・強心剤の投与、ICU(酸素室)での安静が治療の軸となります。
入院中はレントゲン検査・超音波検査・血液検査を行い病態の把握と変化を監視します。


左レントゲン写真の黄色区域が肺水腫を起こしている領域で白っぽく写ります。
右レントゲン写真では肺水腫が収まり、良好な肺野が写っています。
また、肥大した心臓(赤矢印)も、治療後小さくなり、改善が確認できます。

◆内科治療
生涯の内服が必要となります。

◆原因
中高齢以上の小型犬に好発する遺伝性疾患です 。

◆予防
無症状期に病気を発見し、早期に投薬を開始することが重要です。

◆予後
一般的に肺水腫後の予後は1年と言われます。
ただし、一年以上頑張っている子も沢山います。
逆に、肺水腫を繰り返し、助けられないケースも沢山あります。
非常に厄介な病気ですが、早期診断・早期治療に努めたいと思います。

◆その後
1年7カ月経過(16歳2カ月現在)

肥大した心臓は、正常サイズに戻りました。
利尿剤の投与も不要になり、現在2種類の薬剤投与で元気に過ごしております。